jokogumo note

[もののはなし]

ReBuild New Culture

ReBuild New Culture

長野県諏訪市にある建築建材のリサイクルショップ、リビルディングセンタージャパン(以下リビセン)。このところメディアで紹介されることも多く、すでにご存知の方もいらっしゃるかと思います。彼らの活動のメインとなるのは、解体される建物から建具や床、古家具など、まだまだ使えるものを「レスキュー」し販売することでそれらを生かす場を作り出すこと。

きっと今は、日本中どこに住んでいる人でも、魅力ある建物が次々と解体され、廃棄物として処理されていく現状を目の当たりにしたことがあると思う。素敵だなぁと思って見ていた空き家に、幼少時からずっとそこにあったお馴染みの商店に、気付けば「解体」の看板が掲げられ、囲いがされたと思ったら、次に通ったときにはもう更地。そしてその次に通ってみたら駐車場に。

自分の身の回りだけでもこの数年でいくつこのパターンを見たか思い出せないくらい。※ちなみに2016年に全国で除却された(という言葉も切ない)木造建築物は85,398棟だそうです

あぁぁ、あの建具、あの梁。囲いの向こうに見えるのは、何十年も前の大工さんや建具屋さんが手を掛けたものばかり。今と違って機械化が進んでいない時代のものだから、おのずと手仕事のよさが滲み出ていたり、あるものをできるだけ無駄にしない工夫が施されていたりするわけです。人の気配がそこにあるのですよね。

もったいないなぁ、寂しいなぁ。きっと多くの人がそう感じると思うんだけど、今ここに残しておくわけにはいかないし、かといって持ち帰るわけにもいかないし。結局誰もがどうすればいいのかわからなくて、時間という名のベルトコンベヤーに乗っかってとりあえずゴミとして流れていってしまう。それを見ている私を含めた世の中。そしてそれが「しかたのない」こととして当たり前になってしまって。

でも、そこに現れたんですよ。
同じようにそれを見ている人の中から「待った!」と一歩前に進み出た人が。
「おかしいよね、これまだ使えるよね。素敵だよね。」そういって、古材をエイヤッと「レスキュー」し、素直に、そして気軽に「一緒に運ぼう!そして使おう!」と声を掛ける人が。
わーっ、運ぶよ運ぶ。これからどうするの?私にも何かできることある?そんなふうに周りのみんなが手を貸したり、参加したくなるような人柄と、フォローしたくなるようなセンス、そして何より明確なビジョンを携えて。

そのリビセンが彼らのビジョンをしっかりと言語化し他者に伝えることを目的として作ったのがReBuild New Culture。これまでに手掛けた古材を使った空間の施工事例や各方面の方との対談などを含め、リビセンが大切にしていること、その活動、これからのことを、わかりやすく愛情ある言葉でまとめた本です。


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表紙に使われているイラスト(※リビセンのFBページよりお借りしました)


リビセンの理念に共感・賛同する人はもちろん、これから何か新しい一歩を踏み出したいと思っている人、このところなんだか停滞している人、どんな立場であってもふむふむと読み進めるだけでワクワクしてくるような、じわじわと沁みてくるような。多分それは、言葉が素直であることもそうだし、伝えたい。という気持ちがストレートに伝わってくるから。そして目標に向かってひとつひとつ丁寧に向き合っていることが伝わってくるから。

すごいなぁ。素晴らしいなぁ。このスピード感だなぁなんて。私も共感、リスペクトするものとして読み始めたのだけど、途中からそれが自分への問いかけへと変わってくるのを感じました。私は私の思うことを、こうやってちゃんと言葉にして人に伝えることをやっているだろうか。そのために自分自身の気持ちや意思にしっかりと向き合っているだろうか。やりたいと思ったことを、実現させることとして一歩踏み出しているだろうか。

そして同じように悩み、考え、行動に移している仲間(知っている知らないに関わらず、ビジョンとして)のことを心に留めているか。手を差し伸べられているか。

いろいろ不安要素が多い時代だけど、結局は自分自身がビジョンを持ち、小さなところから手を取り合う。いいと思う物事をしっかりと選択して、応援する。与えられる社会じゃない、よりよい社会はきっとそうやって育っていくのだと思う。そんなことを改めて感じさせてくれる本でした。

ReBuild New Culture!
リビセンは建築建材のリサイクルをその手段のひとつとしているけど、世の中のいろいろな物事がその手段になり得るし、誰もがそれを自分のものにできる、いい響き。


店頭にて販売中。是非お手にとってご覧ください。また通販ご希望の方もお気軽にお問合せください。
1,300円+税

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本の中のこの写真がすき。この写真を選ぶあたりが、とってもいいと思った。