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[イベント]

民映研フィルム「草・つる・木の恵み」上映会&トーク

民映研フィルム「草・つる・木の恵み」上映会&トーク

「東北、山と暮らしの道具展」では、会期中の2月5日(火)は民族文化映像研究所による「草・つる・木の恵み」(DMでは正しいタイトルが記載できておらず申し訳ありません)の上映会を予定しています。(*民族文化映像研究所は、日本の基層文化を映像で記録・研究する事を目指して出発した民間の研究所で、これまで119本の映画作品と150本余りのビデオ作品が生まれています)

こちらは東北の内容ではないのですが、私がよく訪ねる福島の奥会津や岩手の西和賀と同じく、特別豪雪地帯のひとつである岐阜県の白川村の草・木・つるなどの自然素材を利用した手仕事を記録したものです。
雪深く冬の長いこれらの地域では、呼び名は違えど同じ素材を使い、形状は違えど同じような目的の道具が作られていたり、また反対にその風土が表れた特徴的なものがあったり、知れば知るほどその知恵と応用力に驚かされるばかり。山、植物、民俗、手仕事。様々な観点から興味深くご覧いただけるかと思います。

昔は当たり前のこととして暮らしの中にあり、自然と受け継がれてきたことが途絶えてしまう。その危機に晒されていること、もの、場所というのは今そこかしこにあって、それらを映像で残してあることは今後ますます貴重になってくるに違いありません。写真も大きな役割を果たしますが、やはり実際に人が動いて話をしている説得力は映像にしかないものです。みなさまとその時間を共有できることを願っています。

また上映終了後には、国立「カゴアミドリ」の伊藤征一郎さんをお迎えし、今回の展示の企画をいたしましたjokogumo小池と共にトークイベントを開催します。

小池はこれまで東北の作り手を中心に訪ねてきましたが、伊藤さんは全国、また海外の手仕事やその産地を多く訪ねてこられました。作り手の家や工房だけでなく材料採取にも同行、それを動画として残す活動もされています。両者の似た部分、異なるところ、それぞれが聞き出し話すことで、より共感や発見のある内容になるのではないかと思っています。身の回りにある自然素材を使い道具をつくること、土地で受け継がれてきたもの、その現状とこれから。ざっくばらんに、質問なども気軽にいただける雰囲気で進められるといいなと思います。平日の開催かつマニアックな内容ではありますが、みなさま是非ご予定くださいませ。

2月5日(火) 18:30〜
【上映会「草・つる・木の恵み(57分)」&トーク】
要予約  参加費2,200円
場所:神楽坂フラスコ 新宿区神楽坂6-16

終了は21:00頃の予定です。途中退席も可能ですが、参加費は一律となりますことをご了承ください。

ご予約はjokogumoまで。
お電話 03-5228-3997 か店頭にてたまわります。留守番電話での受付はできません。営業中(火〜土 12:00〜18:30)にお願いいたします。

それでは、ご予約お待ちしております!

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少し長くなりますが、映像についての紹介文も是非。

「草・つる・木の恵み -飛騨国白川郷」

1998年 / 57分
岐阜県大野郡白川村
白川村教育委員会 委嘱

(作品解説)

冬に数メートルもの降雪を記録する白川郷では豊かな雪解け水も加わり、多彩な草木がある。このフィルムは、その多彩な草木を活用した白川の生活文化を記録したものである。白川郷の先人たちは自然に対する知恵を培ってきた。自然から適材をとりだすには、ふだんの山入りの時からそれぞれの材料のある場所を目にとめておくことだという。また、材料を採取するのに適切な時期や方法など、先人からの経験によって培われていった。

≪ 水辺の草 ≫
スゲやガマは長い葉を重なり合わせて一本の草として立つ構造を持つ。その構造の見事さ。また節がないために折れることが少なく長い繊維を持つ。これを利用して、ムシロやテンゴ(リュック状のもの)、ハバキ(脛あて)がつくられる。

≪ 樹木の利用 樹皮をとるもの ≫
木質部を使うもの、木全体を使うものとがある。樹皮を使うのは、ウリハダカエデやシナノキ。驚くほど薄い樹皮の内皮から、雨具のバンドリや背あてとなるニノモなどがつくられた。

≪ 木質部を薄くへいでつかうもの ≫
しなやかで粘り強い性質をもつ樹木ハナノキが、その典型。細い板状にしたもの(ヒデ)を組み、ヘンコという腰カゴを作る。この性質は雪に圧されては立ち上がるという環境の中で育った、雪国の樹木ならではのものだと言われる。ヒノキ笠は捩じって笠や駕籠などの立体的な形を。ネソ(マンサク)の潅木は合掌造り民家の結束材に利用。

≪ 木そのもの ≫
割れやすさに、その樹木の持つ繊維の性質が現れた。他に、伐採後、何十年もたって樹脂のよっていったアカマツの根からアカシという明かり材料も掘り出した。

≪ つる ≫
サルナシ、マタタビなどの細いつるで、ショーケ(水切りザル)を作る。捻じ曲がりの少ない、なるたけ真っ直ぐで節のないものを選び、それを割ってヒゴ状にして使う。竹の育ちにくい白川ならではの、つるの利用法である。山ブドウ、マフジなどの太いつるは、主に縄や綱となった。

≪ 山国雪国ならではの民具 ≫
ソリ。手ゾリは雪の斜面を一人で大木さえ運ぶことができる。フタハソリは平地用のソリ。雪国に暮らす工夫がソリの種類を生み出した。今回の作業では、文献に残っている深い渓谷を渉るための交通用具、「籠の渡し」を復元した。白川郷の人たちの先人への想い。草やつるや木は、実際に生活の資をもたらしてきたばかりでなく、白川の風土に育つ植物とともに、知恵と工夫をもって力強く生きてきた、この土地の先人の姿を伝えてくれたのである。

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